アレクサンダー・コブリン ハイドン・リサイタル(2009.9.27、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール)
コブリンのリサイタル、、聞いてきました。
前回の記事は余談が多かったので、今回は的を(なるべく…)
リサイタルに絞って。
前回書き忘れましたが、ちなみにコブリン、
辻井さんで有名になったヴァン・クライバーンコンクールの前回優勝者です
プログラムは、
ハイドンの37番、34番、アンダンテと変奏、52番、ベートーヴェンの1番、
でした。
ベートーヴェン以外は好きな曲ばかり。ベートーヴェンは初聴です。
これは楽しみ!
りゅーとぴあは綺麗で立派なホールなんですが、お客の入りは少な目。
まあ地方だし有名ピアニストじゃないし、仕方ありませんね。
企画とか結構頑張ってるみたいだけれど、難しいものです。
私は2列目19番(真ん中へん)、調度手の動きが見れる席でした。
かもたぬきさんも4列19番、やっぱり考えることは同じですね(笑)
手元が見たいもの。
コブリンの服装は最近の定番、黒シャツに黒ジャケット&パンツ。
汗と鍵盤拭き
用のタオルは無し。
さて、37番ニ長調。
(よくレッスンでも取り上げる曲なので、聞けばおわかりになる方も
多いと思います)
普通なら明るく早いテンポで始まるはず。たまに荒くなっちゃう人もいます。
(チャラーチャッチャッチャチャラララ♪のチャラーの部分・
なんて非専門的な表現)。
コブリンはどう弾くのかな~と思っていたら、慎重な出だし。
予習に聞いていたエッシェンバッハのCD、
ソナタ・アルバム1(1) アーティスト:エッシェンバッハ(クリストフ)
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2001/03/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する
とは大分違います。
エッシェンバッハの方が勢い
(やや粗さもあるけど、エッシェンバッハの線の細さ好きなんです)
がある感じ。
コブリンは、丁寧に、一音一音作っていく感じ。
それでもテンポはプロらしくやや速め。
こんな速さじゃ素人は弾けないよ~
まあ前菜に調度いい曲ですね。
緩序楽章の第二楽章は重めに、第3楽章は軽快に。
お次はコブリンの演奏で好きになった34番ホ短調。
やっぱりいいです
これは前日レクチャーで「短調はハイドンにとって重要な曲」と言っていた、ホ短調の曲です。
この曲らしく、やはり慎重な出だし。
第1楽章はまずまずのテンポ。そんなに速くありません。
第2楽章はゆったりした中にコブリンの一音一音に対するこだわりが見えます。
第3楽章、速めかなとの予想を裏切り、ゆっくり目のテンポ。
コブリンが拘っているであろう、音の濁らなさ・粒の美しさがキラキラと際立っていました。
さあ、アンダンテと変奏。
いい曲、大好きな曲です。
これは静かな感情を抑えた主題で始まり、後半悲しみをむき出したような嵐のような部分があり、
また静かに終わる短調の憂いのある曲です。
2つの主題も美しいし、変奏も楽しめるし、ハイドンの名曲の一つだと思います。
コブリンもちょっと気合入れ目ぽい?
リサイタルでは日本でも何度か演奏してます。
それまでのソナタの始まり方からして、慎重に音を作るんだろうなあと思っていたらその通り。
緊張感が走ります。
後半の嵐の部分で激しくズジャーンと低音響かせに行くかと予想してたら、
控えめでした。
静かに消えるように終わる音の緻密さ・繊細さはさすがコブリン。
休憩をはさんで、ハイドンの52番変ホ長調。
浜離宮のリサイタルのこの曲をテレビで見て、コブリンとハイドンが好きになりました。
思い入れのある曲です。
こちらはコンクールでもリサイタルでも取り上げてるし、お手のものという感じ。
第1楽章は、和音をややばらして弾いているような?
どこかチェンバロ的な印象を受けました。
同じ曲でも同じ演奏にはなりませんね。勿論悪い意味じゃありません。
次への期待をワクワク持たせるような旋律の流れ、強い和音
(と言ってもmfくらいなのかな?楽譜持ってないのでワカリマセン)
から急にふっと力が抜けたように弱く繊細な音になる部分。
お得意の技ですね。
第2楽章、緩序楽章。
緩序楽章って退屈してしまうことが多くて苦手なんですが、ハイドンは飽きさせません。
交響曲でもソナタや弦楽四重奏でも、
単に短くサクッと終わるというのもあるんですが、メロディーがいい。
ロマンティックになりすぎず、かといってベートーヴェンみたいに重くもなく、
古典派だけど軽いだけじゃない。
まさに古典派からロマン派への過渡期の音楽。
ハイドンがいなかったらベートーヴェンは出てこなかったと思います。
そんな音楽を、理知的に弾きます。
第3楽章は軽やか。
聞いていて楽しいし、つい頭を振りながら聴きそうになります振ってたかも…。
軽やかな進行に合わせて、それまでの慎重さがいい意味で消えていました。
勢いも必要ですよね。
52番でも、やはり音量は抑えめでした。
爆発するところはない。
お次のベートーヴェン1番。
この曲は初めて聞いたのであまりなんとも言えませんが…
ハイドンとの大きな違いは、音量の幅。
特に強音。強弱のレンジの幅が大きくて、過渡期ロマン派らしく。
でもこれくらいならベートーヴェン苦手(なんか重々しくて…)な私でも聞ける曲でした。
ハイドン・ツィクルスでオール・ハイドンプログラムにしなかった訳がこの曲を聴いて分かりました。
全部ハイドンだと、勿論アンダンテと変奏や52番のように充実した曲もあるんですけれども、
かもたぬきさんの言葉を借りれば「全部前菜みたい」になってしまいます。
やはり「リサイタル聴いた~」という胃もたれ感を味わうには、
ベートーヴェンを持ってきて正解でした。
アンコールは4曲。
ハイドン・ショパン・シューマンとお得意揃い。
お客は少ないながら、拍手は鳴りやみませんでした。
大した事を述べてませんが、総括。
やっぱりコブリンのハイドンはいい!
さらっと弾いてるんだけど、ひねりも効かせているのです。
あと、前日のレクチャーで、
「先生にチェンバロを意識して、と言われたんですが、どうなんでしょう?」
という質問に
「あなたが向き合っているのはさらに可能性を秘めた
ピアノという楽器だということを忘れないでください」
みたいな応答があったのですが、今回のリサイタルでは
古楽器的な響きがあったように思います。
結果的にそうなっただけかもしれませんが…
そして神経質なまでの音の作り。
ますます磨きがかかっています。
ピアノですから鍵盤叩きゃそれなりの音は鳴るんですけれども、
コブリンは一音一音慎重に音を作り上げています。
そんなところは音の流れを作る弦楽器とは違うなあと思ったり。
これからどんどんレパートリーも増えるでしょう。
どんな演奏を聴かせてくれるのか、楽しみです。
で、やっぱり余談。
コブリンの演奏を聞いてみたい方は、ピティナのHP で何曲か聞けます。
今回弾いた34番もありますよ~
他もお得意ものばかりです。
また、クライバーンの時の曲がItunes music store でも入手できます。
CDは、ショパン全集がやり始めで投げ出し状態になっていますが、
ハイドンを近々録音する予定らしいです!
終演後のサイン会で、
「さんきゅー ふぉー ゆあ ぱふぉーまんす。
ぷりーず めいく あ しーでぃー おぶ はいどん ぷろぐらむ。
あい うぇいと いっと べりーべりーまっち!」
(素晴らしい演奏ありがとう、ハイドンのCDも作って下さい、
とても心待ちにしています、と言いたい)
とあやしげな英語で言ったら、
「Yes,November.」
と返ってきました。関係者の方にも伺ったところ、
来春の来日に発売間に合うかはわからないが録音する気らしい、とのことでした。
発売されたら是非!
そして、柿の種だの笹団子だののお土産をぶらさげて帰りの新幹線を待っている時。
なんか喫煙ルームに昆布みたいな外人がすぱすぱタバコを吸っているぞ?
昆布りん実物でした。
車両は違うけれど同じ新幹線だったようです。
勿論、「今日はありがとう!」(怪しすぎるので何と言ったかは控えます…)
と言って握手を求めたのでした。
かんずりの一つもあげれば良かったかしらん。
前日ネットカフェ泊まりだったので疲れが少々あり、
リサイタル中や帰りの電車で疲れが出るんじゃないかと心配でしたが、
良い演奏を聴いて却ってリフレッシュされて帰路に着きました。
そうそう、自分用のお土産にごはんのお供にと、
かんずりに紫蘇の実を漬けたものとえのき茸を漬けたものを買いました。
かんずりはスーパーでも見かけますが、何かを漬けたものは見かけません。
どんな味なんだろ~
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コメント
臨場感のあるレポートをありがとうございました。
全然読みにくくないですよ。(^^)
コブリンのハイドン、やっぱりいいんだなあって、いいなあ、羨ましいと
思いました。
ベートーヴェン1番ソナタは、ピアノ学習者は必ず通る道です。昨年、うちの子もコンクール等でお世話になりました。
そう、ベートーヴェンの音、ハイドンの音、違いますよねえ。同じ古典と言ってもひとくくりにはできません。
いや〜、ますますコブリン効きに行きたくなってきました・・・。うう・・・。
何年お会いしていないのだろう・・・わたくし。
投稿: 乃琶 | 2009年9月30日 (水) 20時37分
自分のレポを仕上げ、急いでやってきました(笑)
うんうんと、うなずきながら拝読いたしました。
かわやなぎさん、しっかりと聴いてらっしゃるなあと感服いたしました。今回は繊細さと大胆さの対比がおもしろかったですね。とてもよいコンサートだったと思いました。
新潟駅でお兄様に会ったんですかっ!握手まで!うらやましい~!!!
コブリンを見かけた、という話を聞くと「タバコ吸ってた」ってのが多いです(笑)。わたしはまだ見たことありません。
いいコンサートはリフレッシュになりますね!私も帰りは疲れ知らずで、元気いっぱいでした!
投稿: かもたぬき | 2009年10月 1日 (木) 03時25分
乃琶さん~
長々と書き連ねてもまだ足りないくらいです。
でも字数が多くなったら余計読みにくいし。
読めたようでよかったです。
ベートーヴェン1番、必ず通る道だったのですね。
私は下手っぴいなままやめてしまったので…
それを考えると、今回はピアノ学習者にはオイシイプログラムだったのかもしれません。
札幌公演もあるといいんですけど…
年々回る会場数が少なくなっていて心配です
投稿: かわやなぎ | 2009年10月 1日 (木) 22時19分
かもたぬきさん~
レポ、読みに行きますね
愛にあふれたレポ、楽しみです。
いやはや、何とも稚拙な表現で恥ずかしいです。
感じたことを簡潔にまとめるって難しいです。
繊細さと大胆さの対比、まさにその通りでしたね。
サイン会では話しかけるのに必死で握手をしてもらうの忘れたんですが、その不手際を思わぬところで取り戻せました
きっと喫煙車両でぷかぷか吸いながら帰ったのでしょう。
投稿: かわやなぎ | 2009年10月 1日 (木) 22時29分